最近では看護師の中にも起業をしようと考えている方が増えているのではないでしょうか。
その中でも、比較的低予算で、ある程度の収益を見込める、訪問看護は看護師が起業する上で1度は検討する事業だと思います。
私も看護師として起業し、訪問看護ステーションを開設をしました。
そのため、ある程度、今起業を考えている看護師の気持ちがわかります。
おそらく、楽しみでワクワクしている反面、わからないことだらけで不安もいっぱいと思います。
起業してよかったことについて書いた記事はこちらになりますので読んでみてください。
今回は訪問看護ステーション開設後、「6ヶ月はしんどいです」ということについて書いていきます。
しかし、安心してください。
その6ヶ月を我慢できれば、何とかなる可能性が高くなります。
もちろん、絶対という訳ではありませんが。
我慢が必要なことについては次の3つです。
- 運転資金問題
- 人員基準問題
- 営業活動の問題
この3つは事業所を開設し、経営する上で避けては通れないものになります。
それでは、訪問看護ステーション開設後にのりこえなければならないことについて書いていきいたと思います。
運転資金がどんどん減っていくことに耐えなければならない
訪問看護を開設するにあたり、ある程度の資金が必要になります。
これに関しては色々言われていますが、固定費や備品をどこまで抑えれるかと人件費をどこまで抑えれるかで準備する金額が違います。
固定費
- 事務所家賃
- 駐車場代
- 光熱費
- 記録ソフト利用料
- 自動車の任意保険
物品
- 自動車
- 書類棚
- パソコン
- デスク・椅子
- 電話・FAX
- 訪問の必要な物品
もっと細かく言えば、他にもたくさんあります。
意外と細々したお金が必要になってきます。
そして、訪問看護ステーションでの1番の支出は人件費です。
これをどこまで抑えれるかが大切です。
融資を受けるにしても、自分で用意するにしても、はじめはある程度まとまったお金を持って開設します。
はじめは資金に余裕があります。
給料が良い方が看護師を採用するにしても、知り合いとはじめるにしても人員を集めやすいです。
開設を目指す看護師は今までの待遇に不満がある方も多いので、自分の理想を追い求めて、給料を高めに設定する方もいます。
開設時に看護師を採用する時の注意点についてまとめておきます。
- はじめから高めの給料を設定しない
- できない約束はしない
- 賞与については経営が安定するまでは出せない可能性について伝えておく
- 場合によっては自家用車での訪問もある
- 昇給についても安定するまでは補償ができない
すべての事業所がこのような約束をする必要はありませんが、少しでも可能性があることについては事前に伝えておく方が、トラブルや離職を避けることにつながります。
事業所によって違いますが、事業所開設から、数ヶ月はほとんど利用者がいないと考えた方が良いです。
その上、少しずつ、利用者が増えてきても、介護保険や医療保険は入金されるまでに約2ヶ月かかります。
つまり、4月に提供したサービスを5月10日までに請求した場合、入金されるのが6月末のイメージです。
このことを考えても2ヶ月は無報酬ですし、そこからいきなりは利用者増えるわけではないので、最低でも6ヶ月、長ければ1年間は黒字にならないと考えておくほうが安全です。
毎月、減っていく預金通帳の残高を見ては落ち込むという日々を過ごしました。
手持ちのお金が減る恐怖と苦痛は今でも思い出すと辛くなります。
この苦痛に耐えることが大切です。
誠実に看護を提供していれば、早ければ6ヶ月、遅くても1年後くらいには黒字になってきます。
1番やってはいけないのは、赤字経営が続くことに耐えれずに事業所をやめてしまうことです。
これをするとせっかくの苦労が水の泡になります。
黒字になると信じて、何とか6ヶ月から1年はこの苦痛に耐えましょう。
看護師の3人確保する難しさ
訪問看護ステーションは看護師2.5人以上必要という、人員基準があります。
これは、常勤換算で2.5人ということなので、常勤2人と常勤の半分の時間勤務してくれる看護師1名は必要ということです。
つまり、看護師3人は必須ということになります。
この看護師3人という数字は絶妙です。
今はこの数字をよく考えられた数字と思いますが、開設当初は本当に憎らしい数字でした。
私のステーションは開設時は2.5人で開設したのですが、すぐにパートの人が体調不良で退職してしまいました。
退職してすぐは、「また次の看護師を探そう」くらいに簡単に考えていましたが、看護師の求人は本当に大変です。
世間でも看護師不足を言われていますが、求人誌やサイトに掲載をお願いしても全く反応がありません。
よく考えてみたら当然です。
開設したばかりのよくわからない事業所への就職は勇気が必要です。
本気で閉設を考えました。
結果的には知り合いの看護師が声をかけてくれて、何とか継続することができました。
その時の感動と安堵感は忘れることがありません。
開設の時の看護師採用のポイントについてはも書いておきます。
- できれば、知り合いなど信用できる人を採用する(可能なら身内がベスト)
- 年齢をしっかり考慮する。(高齢であれば、体調不良のリスクがある)
- 金銭面にシビアな人は避ける
- 事前に状況を説明し、納得した人のみ採用する
- 仕事を選ばない人を採用する
- 分からないことが多いことを説明しておく
- 経験があまりにない人は避ける
- 男性看護師を採用するなら1人まで
- 精神科の経験があると良い
- はじめは特殊な科での経験のみの看護師は避ける
- 営業があるため、最低でも会話程度のコミュニケーションは問題なくできる
これくらいは最低でも考えたほうが良いです。
男性看護師の需要はあります。
しかし、2人は必要ないです。
ちなみに私の事業所は、はじめの営業では男性看護師がいることを前面に出して営業し、少し暴力的な方や対応が難しい困難事例と言われる方を中心に引き受けました。
その中には精神科の方もいます。
今は精神科も入退院を繰り返しますので、精神科訪問ができるのもひとつの強みになります。
はじめの営業では必ず、事業所の強みを聞かれますので、その時に分かりやすい強みを持っていると営業はしやすくなります。
あとは特殊な科に特化するのは悪いことではないですが、それは安定してからです。
はじめから特化するのは、正直きついと思います。
はじめは何でも受ける気持ちが必要になるので、可能であれば内科や外科の病棟勤務経験のある看護師が良いです。
体調については当たり前ですが、看護師を探すのは大変なので数合わせのつもりで安易に採用するとえらい目にあいます。
ちなみに2.5人を維持できずに閉設するステーションも少なからずあると聞きます。
何度も言いますが、求人については、ハローワークではもちろん、求人誌を使っても応募すらほとんどありません。
そのため、2.5人を下回った場合は休止の可能性も出てきます。
開設時の看護師選びはくれぐれも慎重にしてください。
とりあえず、看護師3人を6ヶ月間継続できれば、人員も安定してきます。
看護師は営業活動が苦手な人が多い
時々、商売をしている他の業種の方から「医療関係はいくらでもお客さんがいて良いですね」と言われることがあります。
これは大きな勘違いです。
中には何の営業もしないで、利用者を紹介してもらえるような有名看護師もいるかもしれませんが、そのような看護師は特殊です。
ある程度の組織(病院や施設)の中で活躍していた看護師でも地域に出れば、ただの看護師です。
どの職種でもそうですが、その組織を辞めてしまえば、後ろにあった組織の大きさに気がつきます。
自分が認められていたと感じている方も多いですが、その組織の中にいる自分が認められたと気づきます。
これがいつまで経ってもできない人もいます。
「あんなに良くしてあげたのに、全然話を聞いてくれない」と怒っている看護師がいましたが、その人は自分の無力さに気がついて、辞めていきました。
このような看護師は営業に向かないという看護師についてもあげておきます。
- 人の話を聞けない(自分の話ばかりする)
- 自分の言いたいことが言えない
- 質問などを受けた際にメモを取らない
- 上から目線
- 相手に合わせようとしない
- 介護職との間に上下関係を作ろうとする
- 人との会話を振り返らない
これを見て気づいた方もおられるかもしれませんが、看護師に多いです。
もし、営業をしようと思うならせめて、人の話は聞き、自分の伝えたいことは伝え、メモを取り、聞かれたことに対しては即答でなくても良いので返答をする。
介護職だろうが医者だろうが、仕事をくれるには違いありません。
そして、1番大切なのは、人との関わりを振り返り、同じミスをしないようにすることです。
これは営業や会話に限らず、全てにおいて言えることです。
たまに「過去は振り返らない」とカッコよく言っている人がいますが、そのような人は同じミスを繰り返しています。
基本的に看護師には一般的な会社員の常識がありません。
医療業界という、特殊な、そして閉鎖的な環境で過ごしてきたからです。
その看護師がはじめての営業をして、仕事をもらってくるのは大変なんです。
くれぐれもそこを甘く見ない方が良いです。
失敗を繰り返しながら、6ヶ月くらい営業を継続していると少しずつ、要領もわかってきます。
営業がうまくなれば、もっとたくさんの新規利用者を依頼してもらえるようになります。
そうなってくると営業すら必要なくなります。
この状態になるまでに早くても6ヶ月くらいは必要だと思います。
まとめ
今回は私が訪問看護ステーションを開設した時に特にしんどかった3つをあげて、説明しました。
訪問看護ステーションを開設すると最低でも6ヶ月以上はしんどい思いをする覚悟をしておいた方が良いと思います。
過ぎてみれば、良い思い出ですが、その当時は本当にしんどかったのを覚えています。
しかし、この経験は誰もが通る道です。
今、訪問看護をはじめれば、おそらく早い遅いはありますが、いずれ黒字経営できます。
しかしこの状況もいつまで続くかわかりません。
医療や介護は国の方針変更の影響を強く受けるからです。
はじめるなら早い方が良いです。
可能であれば、必要な資金をしっかり準備してはじめることをおすすめします。
それでは、今回もありがとうございました。