今回は在宅生活を支える訪問介護職員について書きたいと思います。
以前、施設で勤務していた時には同じ職場で介護職員と勤務していたので関わりも多かったです。
訪問看護事業所を開設してからは関わりが少なくなると考えていました。
実際には在宅看護でも介護職員との関わりは継続してあります。
別の事業所の方になりますので、同じ職場の介護職員のように意見を交わせることはありませんが、それでも同じ利用者を支える上で情報共有していくことは大切です。
介護職員については、自分の経験と介護経験者のブログを参考にしています。
今回参考にしたブログについても紹介しておきます。
現役の介護士ブロガーで、介護経験は10年以上になる、「しん」さんが書いているブログです。
興味があれば読んでみてください。
在宅で関わる介護職員となるとほとんどが訪問介護になります。
訪問介護職員について知らないことによるトラブルもあります。
訪問介護職員のことを知らないことによるトラブルと以下にまとめてみました。
- 疾患や対応の知識にばらつきがある
- 感染対策などについての知識もないことがある
- 介護職員によってできるケアとできないケアがある
- 介護に対する知識や技術にも個人差がある
看護職と介護職は重複している業務もあります。同じように行っていると思われがちですが看護師は医療的な視点、介護職は生活的な視点を持って関わっていることも多いです。
看護師も訪問介護職員のことを知らず、意見の相違などがあると関係がギクシャクしてその後のケアに支障が出るかもしれません。
それでは具体的にどのようなことに注意していくと良いのかについて説明していきます。
疾患やケアの知識にばらつきがある
看護師が訪問看護で訪問している場合、なんらかの基礎疾患があって訪問しています。
看護師としては基礎疾患や全身の状態をもとに看護計画を考えていくようになります。
場合によっては衣食住などの日常生活が治療のメインになるような疾患があります。
訪問看護は食事を作ることはありません。
食事についてのサービスが必要な場合は主に訪問介護が担当するようになります。
先日、糖尿病の利用者で血糖が安定しない方がいました。
内服もできているし、なぜ血糖が安定しないのか色々確認した結果、ヘルパー作る食事が糖質がメインの食事ということがわかりました。
もちろんヘルパーも事前に基礎疾患などについての情報は得ているはずです。
なぜそのようなことになったのかについて話し合いがありました。
私も興味があり、話し合いを黙って聞いていたのですが、結局は食事を作っていたヘルパーは病気の知識が全くなく、栄養管理が必要という認識もないため偏った食事を作っていたようです。
話し合いの後、病気についての説明を行い、自分でも勉強したようで同じようなことを繰り返すことはありませんでした。
ヘルパーの中には疾患について全く知識のない人もいます。逆に疾患について本当によく知っている方もいます。
介護職員の医療的な知識はばらつきは大きいです。
看護師であれば、当たり前に知っている知識ですが、介護職員は知識を持っていないケースもありますので、知識がないと感じた時には一度、疾患についての確認や情報共有をしてみると良いです。
感染対策の知識がないことがある
看護師であれば、実習や学生の頃から感染対策についてはしっかり勉強しています。
基本的な知識や技術は習得して、学校を卒業しています。
ヘルパーは違います。排泄物の処理についても人により対応が違ったり、消毒や物品の扱いにも差があります。看護師の基本がヘルパーの基本ではありません。
時々、利用者の中にも看護師は感染対策に気をつけているのにヘルパーが全然気をつけないと言われる方もいます。
看護師の中にもヘルパーの対応について、色々言われていることがあります。
事業所ごとのやり方やどこまで対応するのかによって違いますが、利用者が気にしているのであれば、一緒に相談して対応を決めれば良いです。
対応を決める際には看護師を基準にせず、知識の少ない方を基準にして説明し、決めるようにしてください。
私が思うに看護師は自分を基準にする傾向があるので、他職種とトラブルになることが多いと考えています。
介護職員によって、できるケアとできないケアがある
介護職員の医療行為には制限があります。
できることできないことがあります。
看護師も介護職員ごとにできるケアとできないケアがあることをしっかり理解しておかないと介護職員にできないことを要求するようになります。
できないことを要求したとなれば責任は看護師にあります。
場合によっては事業所間の話し合いまで発展する場合があります。
医療行為について確認をしてみます。
過去には医療行為とされていたが、現在は医療行為に該当しない行為
- 体温計を用いた体温測定
- 自動血圧測定器を用いた血圧測定
- 酸素濃度測定器の装着(新生児以外で入院治療が必要な患者さんに対する場合)
- 軽微な切り傷や擦り傷、やけど等の処置(ガーゼ交換を含む)
- 湿布の貼付
- 軟膏塗布(床ずれの処置を除く)
- 目薬をさす
- 服薬介助(薬を飲ませる行為)
- 坐薬の挿入
- 鼻腔粘膜への薬剤噴霧の介助
医療行為とされているものの、規制対象外となる行為
- 耳垢の除去(耳垢塞栓の除去を除く)
- 爪切り、爪やすり
- 歯ブラシや綿棒による口腔のケア(歯、口腔粘膜、舌等)
- ストーマのパウチにたまった排泄物の廃棄
- 自己導尿補助におけるカテーテルの準備、体位保持
- 市販の浣腸器を用いた浣腸
これらの医療行為については、利用者に異常が見られない場合であれば行えます。
本人やその家族の同意が必要になるもの、医師や看護師の指示が必要になるものが含まれているので注意しましょう。
介護福祉士がおこなえる医療行為もあります。
介護福祉士の国家試験について実務経験を経て受験する場合、実務経験3年以上という受験資格に加えて、介護福祉士実務者研修の修了が義務づけられています。
介護福祉士実務者研修では、医療について学ぶため下記の医療行為ができるようになります。
- 喀痰吸引(定期的に痰を取り除く行為)
- 経管栄養(体外から管を通して栄養や水分を投与する行為)
喀痰吸引等研修を受けた介護福祉士は、認定特定行為業務従事者として、痰の吸引ができます。
本人やその家族の同意が必要であること、医師や看護師との連携すること、医療者による監督のもとでおこなうという条件はあります。
介護職員ができる行為とできない行為について知っておくことが大切です。
できる行為できない行為を知っているだけで協働しやすくなります。
介護職員により持っている資格が違い、知識や技術にも差がある
看護師は看護師免許もしくは准看護師免許を取得すると看護業務ができるようになりますが、訪問介護職員の取得している資格は人それぞれ様々です。
取得している資格により、知識や技術にも差があるため、皆が同じような対応ができないことが考えられます。
どのような資格があるのかについて説明します。
- 介護福祉士
国家試験の受験資格を満たし、1年に1回実施される国家試験に合格することで資格を取得できます。 - 介護職員初任者研修
介護職員の基礎を学ぶ130時間のカリキュラムを受講し、修了試験に合格することで資格を取得できます。 - 実務者研修
介護職員として実践で活かせる知識について450時間のカリキュラムを受講し、加えて医療的ケアの演習を受講することで資格を取得できます。 - 生活援助従事者研修
生活援助サービスに従事するための知識等について59時間のカリキュラムを受講し、修了試験に合格することで資格を取得できます。 - ホームヘルパー1級、2級
2012年度で廃止された資格制度なので、新たに取得することはできません。
これらの資格を取得していた場合は、ホームヘルパーとして働くことはできます。
資格によって、できる業務も違います。
身体介護、生活援助両方ができる資格
- 介護福祉士
- 介護職員初任者研修
- 実務者研修
- ホームヘルパー1級、2級
生活援助のみしかできない資格
- 生活援助従事者研修
介護職員がどのような資格を持って、訪問介護をおこなっているのかについては見た目ではわかりませんのでお願いをする時には注意が必要です。
身体介護と生活援助という言葉が出てきたので一緒に説明をしておきます。
身体介護とは
- 食事介助
- 服薬確認
- 口腔ケア
- 起床、就寝の介助
- 着替えの介助
- ベッドから車いすなどの移乗の介助
- 移動の介助
- 入浴介助
- 排せつ介助、おむつ交換
- 体位変換
生活援助とは
- 利用者の食事の調理
- 食器洗いや後片付け
- 居室、トイレなどの掃除
- ベッドメイク、シーツ交換
- 衣類等の洗濯、乾燥
- 衣類等の整理、収納
- 生活用品の買い物代行
- ゴミ出し
同じ訪問介護でも資格によりできることが違いますし、ケアプランに計画されているサービスによっても内容が違います。
看護師も訪問介護の資格やサービス内容をしっかり把握しておく方が良好な関係を築くことにつながります。
まとめ
今回は在宅で訪問看護と訪問介護が協働するために看護師が知っておいた方が良い訪問介護職員の資格の種類や知識について説明しました。
訪問看護と訪問介護は名前は似ていて、サービス内容も似ている部分もありますので同じようなものと勘違いをされている方もいますが、本来の役割は別のものになります。
訪問看護と訪問介護の連携が取れていないことにより迷惑を受けるのは利用者になります。
訪問看護もしっかり訪問介護のことを知って、スムーズな連携が取れるようにしていきましょう。
それでは今回もありがとうございました。