はじめに、今回なぜタイトルのリハビリ職をあえて、理学療法士にしているのかというと、医療保険での精神科訪問は作業療法士は訪問できますが、理学療法士は訪問できません。
言語聴覚士は、その少なさ上に希少価値があります。
そのためタイトルは、リハビリ職の代表職でありながら、需要が減少している理学療法士をメインにタイトルをつけさせてもらいました。
今回は理学療法士について、今から転職するなら訪問看護ステーションはおすすめしないということについて説明していきます。
私は訪問看護ステーションを経営しており、また訪問看護ステーションの管理者もしています。
そのため、理学療法士のスキルなどについてではなく、訪問看護ステーションの管理者という立場で理学療法士について書いていきます。
もちろん、私のステーションにも理学療法士はいます。
とても優秀でいつも助けられています。
しかし、私は理学療法士の転職で訪問看護ステーションはおすすめしません。
その理由は以下です。
- 訪問看護ステーションの理学療法士という立場
- 訪問看護ステーションからのリハビリは縮小傾向
- 今後在宅でリハビリをしたいのであれば、訪問看護ステーションではない
このようなことから理学療法士が訪問看護ステーションに転職しない方が良いと考えています。
その理由について説明していきたいと思います。
訪問看護ステーションの理学療法士という立場
訪問リハビリと訪問看護ステーションからのリハビリ
医療関係や介護関係の方であれば、訪問リハビリという言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
訪問看護ステーションにリハビリ新規依頼の連絡を頂く場合に、「訪問リハビリをお願いします。」と連絡を頂く場合があります。
しかし、これは厳密に言えば、違います。
どこが違うのかというと、訪問リハビリは医療機関(病院や診療所、介護保険施設など)から訪問するリハビリということになります。
では、訪問看護ステーションからのリハビリと何が違うのかというと、訪問看護ステーションからのリハビリは、「訪問看護の一環として、看護師の代わりにリハビリテーションを中心とした訪問看護を提供するもの」となっています。つまり看護師の代わりにリハビリスタッフが訪問しているということになります。
実施する内容としては同じような内容になりますが、厳密には訪問リハビリではないのです。
はじめてこの説明を聞いたときには、少し違和感を感じましたが今となっては、少しだけ理解できています。
つまり、訪問看護ステーションは基本的には看護師が訪問をする事業所だと理解しています。
そのため、本来は看護師が訪問するのだけど、内容がリハビリなので、看護師の代わりにリハビリ職員が訪問しますということです。
リハビリ職員がリハビリをするのに、「訪問看護師の代わりにリハビリ職員が来ました」という風に聞き取れます。
そして、リハビリ職員がリハビリをおこなっているのですが、訪問看護ということになります。
もう、こうなると訳がわかりません。
私が理学療法士であれば、あまり気持ちの良い表現ではないように感じます。
訪問看護ステーションのリハビリ職員になるということはそういうことです。
理学療法士の皆さんはいかがでしょうか。
人員基準について
訪問看護ステーションという事業所には人員基準というものがあります。
訪問看護ステーションの人員基準は保健師、看護師または准看護師2.5人以上ということになっています。
管理者に関しては保健師または看護師となっています。
訪問看護ステーションが閉設する理由の中には、管理者の問題と人員基準を満たせないというものが多いと聞きます。
つまり、看護師が2人しかいないとか、管理者が退職したというものです。
この人員基準を見てもらって分かるとおり、そもそも理学療法士などがいなくても、訪問看護ステーションは問題ありません。
そして、理学療法士などは管理者にもなれません。
訪問看護ステーションからのリハビリは縮小傾向
報酬について
介護保険や医療保険は定期的に報酬の改定があります。
その都度、加算の算定要件が変わったり、算定額が変わったりします。
訪問看護のリハビリについてはどうかと言いますと、徐々に下がってきています。
ここ最近(2021年)の介護保険で言いますと、看護師の訪問は時間により1単位から3単位の微増でしたが、リハビリは20分当たり、297単位から293単位に引き下げになっています。
ちなみ要支援の利用者に60分のリハビリを提供した場合には、50%減ということになっています。
このように報酬が基本的に下がっています。
理学療法士の訪問は看護師の手間も増える
理学療法士が訪問看護ステーションから訪問する場合、最低でも3ヶ月に1度は訪問看護師が訪問して、利用者の状態をアセスメントしなければならないと決まっています。
しかも、この訪問看護師の訪問に関しては、市町村の考え方によって違うのかもしれませんが、私が所属している市町村では算定ができないと返答をもらっています。
理由に関しては、アセスメントが理由の訪問に関しては、訪問看護が必要な方への訪問ではないので算定はできないという返答でした。
つまり、理学療法士が訪問するためには、看護師が無報酬で時間を作って訪問し、状態観察をしてこないといけないということです。
そうなってくると今後は、報酬が減っている理学療法士の訪問のために、忙しい看護師の手間を増やすより、理学療法士の訪問を減らすことについて検討をする事業所も増えてくるのではないかと思います。
理学療法士も医療従事者にも関わらず、理学療法士では状態のアセスメントができないと考えられているというのも理学療法士の立場としては複雑な気持ちになるのではないかと思います。
理学療法士やりすぎ問題
今まで説明してきたように、訪問看護ステーションは、本来事業所としては看護師がメインの事業所になります。
しかし、実際には看護師がギリギリの2.5人程度で、その他たくさんのリハビリ職員で経営している訪問看護ステーションがあります。
そして、利用者もケアマネもリハビリをプランに入れるのが好きな方が多いです。
そのため、私が訪問看護ステーションを開設した当時、「看護師しかいない訪問看護ステーションはきついよ。」など言われました。
今なら分かりますが、それを言ったケアマネは訪問看護を分かっていないケアマネです。
しかし、その当時は、「リハビリがいないと訪問看護はきついのか」と本気で悩んでいました。
そして、その状況を作ったのが上記のような、本来の形と違う訪問看護ステーションです。
本来の形と違うと言っても、特に基準違反をしているということではないですし、法律に触れているということでもないですが、これは明らかに国が想定していた訪問看護ステーションの在り方ではなかったのだと思います。
その結果、最近話題に上がっているのが、訪問看護ステーションの6割以上が看護職員でないといけない問題です。
訪問看護ステーションの6割以上が看護職員でないといけないということについては、まだ正式に決まってはいませんが、そのような話し合いがなされているということです。
このニュースを見たときに看護師の私は、「そりゃ、当たり前だよね」と思いました。
その理由について少し説明します。
訪問看護のリハビリについては、効果が不明確です。これは訪問に限ったことではなく、高齢者リハビリの全般に言えることです。
前にも書きましたが、高齢者やケアマネは本当にリハビリが好きです。
リハビリをしていれば、以前のように動けるようになると思っている方もいるくらいです。
しかし冷静に考えれば分かるのですが、週に数回、数時間動いたくらいで動けるようになるわけがありません。
在宅でのリハビリは、動作の方法を指導し、運動方法を指導し、それを自宅で継続してもらってはじめて効果が出るものだと考えています。
しかし、ほとんどの方がそのようなことはせず、訪問でリハビリ職員が来てくれた時のみ、リハビリをします。
その結果、当然ながら、思ったほどの機能の向上はありません。
機能の向上がなければ、国としては効果が出てないので、報酬を引き下げたり、回数の制限を設けるのは当たり前です。
お金ばかりかかって、効果がないのですから。
そして、当然ながらリハビリをメインで行なっている事業所はこのことは分かっています。
それでも、その状況を続ける理由については、「儲かるから」です。
機能の改善がみられなくても、本人が好きで希望しているリハビリを、減算にならないギリギリまで入れているということです。
このような状況に国はやっと気づきました。
これに対して、理学療法士協会、作業療法士協会、言語聴覚士協会が反対の署名や抗議などを行なっていました。
みなさんはどう思いますか?
私は、正直リハビリという仕事の将来が不安になりました。
今後在宅でリハビリをしたいのであれば、訪問看護ステーションではない
私が思う訪問看護ステーションでのリハビリについて説明してきました。
しかし、熱心な理学療法士の中には、どうしても在宅での生活を支えたいという熱い思いを持った方もいます。
そのような方に向けて、今後在宅でリハビリをしたいのであれば、就職先としては、やはり「訪問リハビリ」になると思います。
はじめから読んでくれている方は「そうだよね!」と思ったはずです。
今後は、医療機関からのリハビリがメインになります。医師との連携もスムーズにいきます。
看護もそうですが、リハビリも医師との連携は不可欠です。
あと最近、気になっているのは、超短時間のデイケア利用が増えていることです。
デイケアの制度については分かりませんが、自宅に迎えに来てもらって、リハビリをして、送迎してもらって帰るというのを短時間の間に行うということです。
場合によっては少し時間を長くして、入浴もして帰るというパターンもあるのだと思います。
これからは、送迎付きのリハビリがメインになる可能性も感じています。
まとめ
以上が訪問看護ステーションで管理者をしている私からみた、訪問看護ステーションの理学療法士の現状になります。
理学療法士の中には熱心に取り組んでいる方もいます。
そして、実際に効果の出ている利用者もたくさんいます。
しかし、効果も出ていないのに、頻回に訪問しているケースが多いのも事実です。
その結果、今回のような改正に向かって話が進んでいるのだと考えます。
熱意のある理学療法士は、今から就職するのであれば、訪問看護ステーションではなく、在宅リハビリをしている医療機関への就職をおすすめします。
いろいろな意見があると思いますが、在宅リハビりの今後について考えてみてください。
それでは今日もありがとうございました。