今回は訪問看護を利用するメリットとデメリットについて説明していこうと思います。
訪問看護と聞いて、みなさんはどのようなものを思い浮かべるでしょうか。
食事、排泄などの介護的な部分を思い浮かべる方もいれば、点滴や注射のようないかにも医療的な部分を思い浮かべる方もいるでしょう。
訪問看護サービスの中にはある一定の条件はありますが、どちらも入っています。
訪問看護がどのようなことをしてくれるのかについては過去の記事で説明をしていますので興味があればそちらを読んでください。
実は介護と看護は重複している部分もあります。そのため、この場合はどっちを利用すれば良いのか迷うケースもあると思います。
訪問看護ステーションの管理者をしている私が訪問看護を利用するメリットとデメリットについて説明をしようと思います。
私としては、迷っているのであれば訪問看護を週に1回、もしくは2週間に1回でも良いのでサービスに入れておくのが良いと考えています。
場合によっては訪問介護と同じように見える訪問看護ですが、利用するメリットとデメリットについて説明していきます。
訪問看護を利用するメリット
訪問看護を利用するメリットを簡単に説明をすると医療行為ができることです。
訪問看護を利用するメリットとしては以下のものがあります。
- 日常生活動作の援助と合わせて、医療的なケアができる
- 体調に不安がある場合も体調管理をしながらケアをすることができる
- 先生にすぐに相談できる
- 医療的な部分の相談対応ができる
それぞれについて説明します。
日常生活動作の援助と合わせて医療的ケアができる
看護師が訪問しますので、衣食住などの日常生活のケアもできます。
それに加えて、内服薬の管理や注射、排便処置、酸素の管理やチューブ類の管理もできます。
吸引などの処置もできますので、嚥下状態の悪い方への食事介助なども看護師の方が何かあった時の対応はスムーズです。
排泄に関しては、トイレで行う場合も排泄は力が入りやすい行為になりますので体調が悪くなりやすいです。排泄中の体調にも注意が必要になります。
排泄物は皮膚トラブルの原因になります。排泄ケアを行う際に浣腸や摘便などの処置もできますし、排泄物によりびらんや潰瘍がある場合には、看護師が訪問をしていれば、観察や処置を行うことができ、主治医への報告や指示内容の実施もスムーズです。
訪問介護になると事業所によって、対応は違いますが、できることできないことがありますのでその辺りは注意が必要になります。
何かをするときの移動動作についても、高齢になれば転倒のリスクは高まります。転倒が起きた時の対応は観察や報告や処置を含め、看護師の方がスムーズです。
このように看護師が訪問すれば何かトラブルがあった時の対応がスムーズにできるのはメリットです。
体調に不安がある場合も体調に注意をしながらケアすることができる
基礎疾患などにより、体調に不安がある方もおられます。
ケアをすることによって体調が悪化するのではないかと心配をしている方もいるのではないでしょうか。
訪問看護であれば、体調の管理や状態観察をしながらケアをすることができます。
例えば、体調が悪くなりやすいケアとしては、入浴です。入浴中のトラブルは多いです。
看護師であれば、観察をしながら入浴介助をすることにより、体調が悪くなる前に入浴を中止したり、万が一、体調が悪くなった場合もすぐに対応できます。
先生への報告も適切に行うことができます。
体調によっては食事にも不安がある方がいます。そのような時にはどのような食事形態を摂取していくのか、量はどうか、間隔はどうかなどがあります。
水分摂取の場合もトロミは必要か、内容はどうか、量はどうか、など食事摂取と言っても状態により対応は変わります。
上でも説明しましたが、摂取時にトラブルがあった場合も看護師であれば吸引などを行い、対応することができます。
このように体調に不安がある場合は訪問看護が良いです。
先生にすぐ相談できる
今までの説明で何度か出てきましたが、先生への相談がスムーズです。
先生に相談する際、先生は実際に利用者を診ずに指示を出すようになります。
ある程度正確な情報が必要になるのですが、それには医療的な知識が必要になります。
その上で観察を行い、状態を伝えることにより適切な指示がもらえます。
先生から出た指示を実施するにも看護師でないとできないことがあります。
緊急時の場合は経験も必要になります。
以上のことから先生に報告する場合も看護師が対応する方が良いです。
本人や家族からの医療的な相談に対応することができる
在宅で基礎疾患を抱えながら生活をしていると医療的なことを相談したくなることがあります。
そのような時に介護職員だと専門的ではないということによりはっきりとした返答がもらえないことがあります。
介護職は医療に関しては専門ではない以上その対応は適切です。
看護師であれば、専門的な教育を受けて、看護師免許を持っていますので、専門的な知識を持った上での相談に応じることができます。
看護師の説明により安心感を得られるのではないでしょうか。
状態に変化のあった時の対応やその時に相談するときも看護師が良いです。
看護師であれば、電話をした際にも、どこを見てほしいとはっきりと指示を出せます。
そうなれば迅速に情報収集ができるので対応がその後の対応がスムーズになります。
以上が訪問看護を利用する際のメリットになります。
それではこれからデメリットについて説明をしていきます。
訪問看護を利用するデメリット
訪問看護のデメリットは金銭的な負担が多いことです。その他にも訪問看護ではできないサービスもあります。
訪問看護を利用する際のデメリットとしては以下のものがあります。
- 料金が訪問介護に比べ高い
- 生活援助などができない
- 訪問看護指示書に記載のある住所以外への訪問はできない
- ケアマネによっては看護師に苦手意識を持っている人がいる
それではそれぞれについて説明します。
料金が訪問介護に比べて高い
今回はわかりやすく、訪問介護の身体介護で比較します。
訪問介護 30分未満 250円(1割負担)
(身体介護) 60分未満 396円(1割負担)
90分未満 579円(1割負担)
(2022年3月時点)
訪問看護 30分未満 470円(1割負担)
60分未満 821円(1割負担)
90分未満 1125円(1割負担)
(2022年3月時点)
身体的ケアを行うサービスを比較しても訪問介護の方が安くなります。
訪問介護には身体介護と生活援助がありますが、生活援助に関しては身体介護よりさらに安くなります。
このように医療的なケアや観察、主治医との連携が必要ないのであれば、訪問介護の方が安くなります。
生活援助は訪問看護ではできない
生活援助に関しては訪問看護ではできません。
これは掃除、洗濯、買い物、料理、ゴミ出しなどになります。
このサービス内容は訪問看護には入っていませんので、この部分が必要な場合には訪問介護をお願いするようになります。
以前の記事で訪問看護がこの生活援助を行うことはいけないという記事を書いていますので興味があればそちらも読んでみてください。
一緒に行うことにより自立を促していくということであれば、訪問看護師が利用者と一緒に行うことはできます。
一緒に行うことにより、リハビリにもなります。
一方的な提供ということになると訪問看護では対応できません。
訪問看護指示書に書いてある住所以外への訪問はできない
訪問看護は医師の指示のもと訪問をして看護をします。
訪問看護を開始するには、主治医からの訪問看護指示書と利用者との契約が必要になります。
いくら契約書で書いた住所であっても、訪問看護指示書に書いてある住所が違う場合はその場所に行って、訪問看護サービスを提供することはできません。
つまり、移動先で訪問看護を提供することはできませんし、ましてや移動の支援などもできません。
移動や受診の同行、見守りに関しては他のサービスになります。
看護師に苦手意識を持っているケアマネがいる
私の感覚では、看護師に苦手意識を持っているケアマネは多いです。
特に福祉系出身のケアマネです。
医療的な話をするときに何も言えなくなるのが理由ではないかと考えます。
本来は専門職でないケアマネの場合は専門職の看護師がわかるように説明して、一緒に考えたり、一緒に情報を共有すれば良いのですが、それができない看護師が多いです。
それにより、苦手意識を持っているように感じます。
介護保険における在宅ケアの中心はケアマネです。
私も介護支援専門員(ケアマネ)の資格を持っていますが、その研修でもそのように言われますし、担当者会議などでサービスの中心にもケアマネがいます。
苦手意識から訪問看護を避けるケアマネもいます。
これは看護師の責任でもあるので、そのケアマネを責めることはできませんが、利用者に不利益があってはいけませんので、必要と感じれば訪問看護にも相談できる関係作りをしていく必要があります。
まとめ
今回は訪問看護を利用するメリット、デメリットについて説明しました。
細かくいえば、まだまだあります。
私の考えとしては、週に何度か訪問介護を利用しているのであれば、その中の1回で良いので訪問看護を利用してもらえれば、主治医との連携がスムーズになったり、服薬管理や副作用の管理、状態把握がスムーズにいきます。
また、今後医療的なケアが必要になったときの医療的ケアの開始もスムーズになりますのでぜひ、検討してください。
訪問看護はこれからも在宅医療を支えるサービスとして必要になります。
訪問看護を利用するメリット、デメリットをしっかり考えて頂き、利用者に不利益のないサービス利用に役立ててください。
それでは今回もありがとうございました。